オーストラリアの弁護士のいろいろ その14 訴訟

今日は弁護士の立場で感じること。世間が良く「裁判を起こしてやる、訴訟してする、訴えてやる」という事に対して、知っておくべきお話をざっくばらんに書いてみます。

オーストラリアは、各専門弁護士がおり、訴訟も訴訟専門弁護士がいます。これとは別に、法廷に立つのはBarristerと言って法廷弁護士がいます(いまだに、ルイ19世のようなかつらをかぶりガウンを来て出廷します)。

世間では、法廷弁護士が訴訟資料を全部用意すると思いがちですが、重要な資料作りは訴訟弁護士が行います。

さて、世間が言う「訴えてやる」というもののうち、実際どれくらいの案件が訴訟案件として成り立つのか?

裁判所は、人が訴えたいこと全て裁判案件として認める訳でなく、Merit(裁判するに値する)があると判断した場合にのみ、裁判案件として認めます。この辺オーストラリアは他国に比べ保守的で、どんな案件も裁判として成り立つ訳ではないと思います(個人意見として)。

また、「裁判を起こす」側の目的を最初からじっくり考えて裁判を起こすべきです。勝訴して相手を負かしたいだけなのか(それですっきりするのか)、勝訴して相手からお金を取りたいのか(お金が最終目的なのか)。勝訴とお金の回収は全く別の問題ということを理解しておかないといけません。

人の「正義」はその人の価値観で全然違ったものになります。裁判所があなたの考える正義を正義と認めるか?弁護士の力量で変わってくることはあります。

裁判所の判決=あなたの正義に伴った結果になる、とは全く限りません。

私が訴訟案件を積極的にお手伝いしないのは、争うのが嫌いとかそういう次元のことではなく、この矛盾に疑問があるからです。