オーストラリアの弁護士のいろいろ その9 弁護士保険とは

今回は少々真面目なお話です。

弁護士事務所にとって一番重要なのは、クライアントから訴えられないこと、そして弁護士会の方針に100%忠実に順守することです。そのために、弁護士は弁護士保険の加入が義務付けられています。

オーストラリアの弁護士保険は普通の保険代と比べものにならないくらい高額です。また免責額も普通の保険と比べものにならないくらい高額!具体的に言うと、免責額は自動車保険の100倍以上。

弁護士保険会社は、選択の余地は無く、唯一一社のみ!

毎年リスクマネージメントの講習があるわ、毎週のごとく新しい規則や注意事項のメールが次々と届き、あれをするな、これをするな、これはリスク!だとか、やいやい言って来ます。

こういう背景から、オーストラリアの弁護士事務所では、とことんリスクマネージメントが強化されます。

例えば、クライアントへのアドバイスレターは、

「これこれしかじか、つまり貴方の選択は1がこれでこういう結果が予想されます。2がこれでこういう結果が予想されます。貴方はどちらを選択しますか?」

と選択権は100%クライアントに委ねられ、もしその選択が失敗した場合は「当所は貴方に全てアドバイスしました、選択したのは貴方です」と逃げる用意ができている。

しかしこういう手法は、日本人クライアントには全く通用しない…………….。

私が、過去に何度も日本人クライアントから言われたのが、

「どちらを選択したら良いか分からない、だから弁護士の貴方にお願いしているんです、どちらが良いか選んで下さい」。

つまり、ここはオーストラリアであるものの、クライアントは日本人。そうすると、日本人のクライアントが納得する方法でアプローチしないと通用しない。しかし、クライアントを優先すると、所属事務所のパートナーから怒られる。

お勤めしていた頃、こんな狭間でもがいたものでした。独立してからは全ては自分のリスク、覚悟して自己流スタイルでやっています。

つづく